会長挨拶

森林利用学会会長
高知大学 鈴木保志

森林利用学会会長
高知大学 鈴木保志

2025年度の森林利用学会総会における2年に1度の役員改選が行われ,この度会長を拝命いたしました。精一杯尽力していく所存ですので,学会会員の皆様にはこれまでと同様,どうぞよろしくお願いいたします。

人口減退期に入った日本において,各方面で人手不足や若手の人材確保に関する問題が聞かれるところではありますが,森林利用学会においても大学院生やそれに相当する年代の会員が減少しています。会長就任に際しての抱負としては,これからの学会を担う人材の育成を挙げたいと考えています。

私が勤務する高知大学では,近年の改組により,時代の流れではあるのですが,森林科学(旧林学)は単独の学科やコースではなくなり,旧農学や農業工学を含めたコース構成になりました。しかし,入学してくる学生の興味動向を見ていると,大きな括りの農学を試行する学生の中には常に一定の割合で森林・林業を志向する者がいることを感じています。森林利用学・林業工学は,森林・林業に関する学問の中ではマイナーな分野ではありますが,森林・林業を志向する者の中には高い割合ではありませんがやはり一定数,実践的な林業や機械あるいは森林作業に興味を持つ若者が存在します。そこにどうやって私たちが取り組んでいる課題や研究の魅力を伝えるか,が鍵ではないかと思います。

皆様ご存じのように,林業のスマート化や林業への様々なIT技術の導入が進んでいます。すでに研究者として活躍している若手の方々は,そうした課題にすでに積極的に取り組まれており,顕著な成果も見られています。林業の現場でも,ベテランの方々のみならず,若手の方々の精力的な取り組みにより,新しい技術の開発や実装が進められています。学会としては,常に林業の現場を範とする森林利用学の難しさと魅力を,次の世代を担う学部生や大学院生,若手の技術者に伝え,ともに取り組んでいく仲間を増やすことが使命のひとつであると考えています。

最近,恩師の仕事を振り返る機会がありました。自らの学生,助手時代,多くの現場を見せていただき,現場で活躍する林業界の方々とお会いする機会を設けていただいたことは,私にとって大きな宝となっています。日本各地の林業家や関連企業・団体の方々には本当にお世話になり,貴重な体験と学びを与えていただきました。その恩返しをこれまでできていたか,と考えると,恥ずかしながら正直なところ反省しきりです。学生セミナー,現場見学会,研究発表会,そして各種研究会や関係団体との交流など,学会の活動を通じて,次の世代に繋げていくための若手の育成のみならず,努力していく所存です。そのことが,学会の目的として規約にも記されていますように,森林の保全と林業の発展への寄与に繋がると信じております。そのためには,会員の皆様のご協力が必要です。よろしくお願い申し上げます。