森林利用学会会長
東京農工大学 岩岡正博
2021年度より会長を仰せつかりました,東京農工大学の岩岡です。 いつまでも若いつもりでいる間に, 歳だけとってしまってこのような大役に就くこととなり,
責任の大きさに改めて身の引き締まる思いをしています。 力足らずの面も多々あると思いますが, どうぞよろしくお願いいたします。
さて, 2020年は世界中がコロナパンデミックに襲われ, 経済的にも停滞した1年でした。 我が国も例に漏れず経済は大打撃を受け, その結果年度当初こそあまり大きな影響が見られなかった木材生産業も,
最終的には需要の1割減を受けて国産材供給量も1割減となってしまいました。
森林利用学会は, その規約第3条にあるとおり 「森林作業,森林機械,森林土木をはじめとする森林利用の学術的並びに実際的研究を行い」, その結果として
「森林の保全,林業の発展に寄与することを目的」としています。 したがって, 需要の減退している現在, そして海外の一部の国々では兆しが見え始めている経済回復に向けて,
林業界を支えていくことが我々の大きな仕事です。
森林利用学の研究分野は, 規約にある作業,機械,土木だけに留まらず, 近年増えている木質バイオマスのエネルギー利用を受けて, サプライチェーンの構築や環境影響評価まで広がっています。
そして研究内容は, レーザ測距(LiDAR)や人工知能(AI)といった先端技術の開発, 応用にも及んでいますが, それだけではなく, それらの新しい技術をいかに現場に適用できるようにするか,
ということも重要な課題です。 特に日本の林業は数多くの中小の事業体によって成り立っているので, そのような事業体を元気にすることが林業の活性化にもつながってきます。
そこで使えるような形に先端技術をいかに落としこむか, あるいは小規模事業体でも利用可能な技術の開発など, 我々の課題はまだまだ多くあります。
コロナパンデミック以前は, 日本の木材需要や国産材供給量は, 安定あるいは微増の状態が続いていました。 これに対して日本の森林の齢級構成は,
2017年3月末のデータで11齢級をピークとするほぼ正規分布のような形をしており, ピークとなる齢級が少すずつ高齢級に移っていく状況が続いています。
したがって, まだまだ供給に余力がある状況であり, そのための技術開発や人材育成について, 我々の分野に対する世間からの期待も高いと感じています。
また, 正規分布のような形をしているということは, 新植地が少ないということであり, 造林・育林作業の効率化,省力化の点でも, 我々は期待に応えていく努力が必要です。
現場の人材, 研究に携わる人材, どちらも育成していくことが, 我々に課された重要な課題です。
林業の発展に向けて, 森林利用学を益々発展していけるよう, 皆様の力をお借りしながら努力していきたいと考えています。 どうぞよろしくお願い申し上げます。